内 科

森川 医師
森川佑二(もりかわ ゆうじ)
(内科、神経内科)


初めまして。
今年の8月から火曜日午後の診察・往診、さらに第2火曜日を除いて、夜診を担当することになりました。
 年齢は72歳とまもなく後期高齢者になろうとする年齢です。人生は短いというのは
本当ですね。
「花の色はうつりにけりないたずらに我が身よにふるながめせしまに」という小野小町のうたをこの数年心底から実感しています。
 私は元々小児科の医師でした。約20年間子ども達を診ている内に「この子達は大きくなればどのような大人になるのだろうか?」という気持ちが強くなって、無性に内科をやりたくなり、25年以上前から内科の医師として活動しています。
 小児科の頃は小児神経を専門として、発達障害やてんかんの子ども達を診ていました。 この子ども達の将来はどうなるのだろうかと考えて手相を調べたこともあります。母親との話し合いの中でカウンセリングや精神療法も勉強しました。
 しかし結局は内科の診療にしくはないと、内科医師として現在に至っている次第です。
 内科と小児科の違いは何かと言われますと、私は「小児科は発達するものである、様々な意味で発達変化する人間を時間の流れの中で診て行く診療」と答えますが、内科についてはあまりにも膨大な世界でよく分かりません。
 最初の頃は内科は大人、すなわち成熟した完成した人間についての診療と考えていたのですが・・・。しかし大人も発達変化します。小児以上に診る度に変化します。何よりも医師との間の人間関係が大き<目まぐるしく変わります。
 互いに深い信頼関係を結べるすばらしくよい関係から、それこそケンカのような破綻と言ってよい関係まで様々です。それも目まぐるしく変わると言ってもよいように思います。特に高齢者であれば精神的・肉体的に大きく変化しますし、診察の直後から何か起こっても不思議ではないといえます。
 小児科の頃は子どもはまるで”希望”でした。常に将来のことを考え、よりよい方向へと考えるのが常でした。内科へ転向した直後から、私の目から見た内科の患者さんは一変しました。
”迷い”、これが内科の患者さんです。まるで四谷怪談の世界に入ったような気持ちでした。おそらく私が小児科の頃に中途半端に精神療法を勉強したためにこのような印象を持ったのだと思います。
 内科の患者さんはオイワさんのように迷っておられるようでした。地に足を着けず幽霊のようにユラユラと不定・不安・さまざまな訴えをされました。しかしよくよく考えましたところ、逆にその頃の私の方がオイワさんのように揺れ動いていたのだろうと思います。それでもどういう訳か私は四谷怪談のオイワさんが大好きです。
 内科の診療では私は今でいう総合診療内科を目指して来たのでしょう。いわば何でも屋といえます。何でも診るというのが私の特徴かなと思っています。
 上記のように私は内科でも小児科でも基本は変わらないと思います。医師である私も含めて互いに発達変化するものと考えています。結局は診療とは患者さんと互いに信頼を深めながら関係を深めてゆくものかなあ・・・と少し達観したような感じになっています。
この度私がこの診療所に勤務することとなったきっかけは、当院が往診の担当医師を求めていることを知ったからです。私は往診については、これまでの何年も往診を行っていてそれなりに経験があります。往診とは入院の延長ともいえるでしょう。まるで病院の建物から患者さんの自宅へ橋が架けられているような感じです。入院ベットが患者さんの家に存在しているようなものと考えています。ただ往診は、患者さんの自宅ヘズカズカと無遠慮に進入するものですからそれなりの繊細な配慮が絶対に必要であるという点で入院とは異なりますが・・・。
 最後に私は医療とは次のようなものと常々考えて来ました。
 何よりも患者さんの苦痛や不安を軽減すること、出来るなら病態の原因を究明しそれを取り除くことによって患者さんの生命がより長く保たれること、さらに患者さんの残された人生がより有意義であるよう、最低限度の条件を設定すること、そしてそれらを患者さんととともに造り上げて行くこと、これが医療であると私は考えます。

 いずれにせよ私はこの診療所で勤務させていただくこととなりましたので、今後ともよろしくお願いします。
(2016年9月13日)



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